海外臓器移植支援の真実と現在の裁判について
HIROMICHI KIKUCHI
菊池仁達 OFFICIAL WEBSITE
何をおいても、奥様の決断に、敬意、敬服の念に堪えません。
年間、新たに増える透析患者約3万人の中で、家族から腎臓を譲り受けることができるのは、わずか1500(5%)人程度という現実があります。
振り返れば、数多くの相談者の中には「土壇場になれば○○がドナーになってくれるだろう」と期待を抱きながら、結局ドナーになってもらえず、移植手術を受けられずに透析を延々と続けられている方も少なくありませんでした。
その家族に尋ねると、「ドナーを断ると角が立つので曖昧にしている」との答えが返ってくることがよくあります。
家族も、2つあるとは言え、いざ自分の腎臓を摘出するということを具体的に想像すると躊躇するのであって、私は、それが何ら不思議なことではなく、ごく当たり前の感情だと思います。
国内で5%の人しか生体間移植を受けられない現実がそれを物語っています。
それでも腎臓を差し出したくないということをストレートに伝えるわけにもいかず、家族は、「リップサービス」に近い対応をせざるを得ないのです。
それ故に、小錦さんは、運がよいとても幸せな方だと思います。
ところで・・・
米国では、BMI・40以上は、原則、臓器移植に不適合だと聞いています。
私のところへ相談に見えた腎移植を希望する患者様の話をしたいと思います。
今から8年ほど前の話になりますが、北関東にてクリニックを経営する医院長(50代・男性・透析歴3年)から、ご本人の海外移植希望の問合せが入り、クリニックにて面談することになりました。
会ってすぐに、肥満体系の方だったので、直感で腎移植はまず無理だと思いました。
小錦さんほどの肥満ではありませんでしたが、かなり太っており、まさに「医者の不養生」を体現されている方でした。
私が渡航しても移植できる可能性は低いと何度説明しても、当人は「外科医の判断を聞く」と頑なで、渡航を強硬に主張されました。
同じ時期に他に4名の渡航が予定されていたので、一緒に天津へ出発しましたが、腎移植の適応検査にて、やはり彼だけは不可となりました。
不可となった理由を医師(執刀女医)に尋ねると、「自身で体重のコントロールが出来ない方に腎臓移植を受ける資格はありません」と明快な返事でした。
加えて「8Kg減量したらもう一度、お越しください」とも話されました。
執刀女医は米国帰りで、米国の基準を踏まえて判断されたようです。
執刀医にしてみれば、私たちの患者は数多くの一人であり、移植手術をしようが、しまいが医師の所得や待遇が良くなるといった事情は何一つありません。
従って日本からの患者であろうとお構いなしです。
その肥満の医師に移植術の適応検査の結果を伝えたところ、憤慨し、「金を出すから何とかしろ・・」と言われました。
しかし、一度下された判断が変わることはありません。
これが、私どもNPOがサポートしていた海外臓器移植の実態であり、およそ臓器売買が入り込む余地など全くありません。
臓器売買がなされているのであれば、適応検査の結果など関係なしに、臓器移植が実施されるはずです。
※結局、この患者さんは、帰国2か月後に食べ物をのどに詰まらせ亡くなったと奥様から連絡が入りました。力になれず、誠に残念な結果となってしまいました。
マスコミ各社は、このような実態に目を背け、事実を歪曲した報道を繰り返しました。
既に提訴したNHKに加え、他の報道機関も今週提訴しました。
年明けには訴状が相手方へ届くと思います。